ここでは、男性の薄毛の原因に多い、AGA(男性型脱毛症)の治療において用いられる、内服薬(フィナステリド・デュタステリド)や外用薬(ミノキシジル)がなぜ有効なのか、そのメカニズムについて解説いたします。
AGAとは?
最近よく耳にするAGAという言葉ですが、実は一体何のことかよくわからないな?という方も多いのではないでしょうか。
AGAとはAndrogenic Alopeciaを略したもので、日本語では男性型脱毛症と呼ばれ、思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症のこと、と定義されています。
日本人男性の場合は20代後半〜30代にかけて発症し、40代以降にかけて進行することが多いと言われています。
そのためできるだけ早くからケアすることが大切です。
毛周期について
1本の髪の毛が生え始めてから抜け落ちるまでをヘアサイクル(毛周期)と呼びます。
下図のように、本来であればヘアサイクルのほとんどは髪が太く長くなる時期である成長期にあたります。
ところが、AGAの場合はジヒドロテストステロンという男性ホルモンによって髪の毛を作り出す毛母細胞が破壊されてしまうため、成長期が短くなってしまいます。
その結果、休止期にあたる髪の毛の割合が多くなり、また髪は細く短い状態で成長期を終えることになるため髪の間から地肌が透けて見える薄毛と呼ばれる状態になってしまうのです。
治療について
当院では『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(日本皮膚科学会)』に基づく治療を行なっております。(詳しくは別記事へ)
方針としてはフィナステリドもしくはデュタステリドという飲み薬とミノキシジルの塗り薬を用いる方法です。
ここでは使用するお薬について解説します。
【内服薬:フィナステリド】
- 一般名:フィナステリド
- 商品名:(先発品)プロペシア、(後発品)フィンペシア・フィナクス等
AGAを引き起こすジヒドロテストステロンは、テストステロン(男性ホルモン)が5αリダクターゼという酵素と結合することで作られます。
フィナステリド はこの酵素を阻害し、ジヒドロテストステロンの産生を抑制することでAGAの進行を遅らせることができます。
【内服薬:デュタステリド】
5αリダクターゼとは、テストステロン(男性ホルモン)と結びついて、ジヒドロテストステロンに変換する働きを持つ酵素のことです。
実はこの5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、フィナステリドはⅡ型のみを抑えるのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型のどちらも同時に抑えることができます。
【外用薬:ミノキシジル】
血管拡張作用により、頭皮に塗ることで頭皮の血行を促進し毛母細胞を活性化させます。
また、当院で処方する外用薬にはミノキシジルに加えて以下の有効成分を含みます。
- アデノシン:毛母細胞を活性化させる発毛促進因子(FGF-7)の産生を促します。
- プロシアニジンB2:毛母細胞を増加させ、ヘアサイクルを整えることで髪を太くします
- オレアノール酸:5αリダクターゼを阻害しジヒドロテストステロンの産生を抑制します
- アピゲニン:毛母細胞を破壊する発毛抑制因子(TGF-β1)の産生を抑制します。
治療に伴う合併症について
上記薬剤の使用により以下の副作用が生じる可能性があります。
※使用した全ての方に全ての症状が生じるわけではありません。
【フィナステリドおよびデュタステリド】
- 肝機能障害
- 性機能低下:性欲減退、勃起障害、射精障害、精液量減少など
- その他:掻痒感、蕁麻疹、乳房肥大、抑うつ症状など
※肝機能のチェックのため年1回以上の血液検査を受けることが推奨されています。
※男子胎児の正常発育に影響を及ぼす可能性があります。
経皮吸収されるため、特に妊娠中の女性の手に触れないようご注意ください。
※PSA値を約50%低下させるため、前立腺がん検診を受ける際は内服薬の申告が必要です。
※服用中は献血ができません。服用中止後、フィナステリドは1カ月、デュタステリドは6ヶ月経過しましたら可能になります。
【ミノキシジル外用薬】
- 初期脱毛、多毛症
- その他:掻痒感、発疹、接触性皮膚炎、毛包炎など
※血管拡張作用があるため、心疾患や血圧に異常のある方には使用を推奨いたしません。
まとめ
髪の毛が伸びる速さは1日約0.3mm、1ヶ月で約1cmと言われています。
そのため治療効果は早くても3ヶ月、通常6ヶ月以上で実感される方がほとんどです。
繰り返しになりますが、AGAは加齢とともに進行します。
早期にケアを開始し、治療を継続することが何よりも大切です。