この記事では、新型コロナウィルス感染症と脱毛症(抜け毛・薄毛)の関係性を取り上げます。
未だ明らかになっていないことも多いですが、関連性について医師の目線から解説します。
【新型コロナウイルスの後遺症で脱毛が起こる?】
新型コロナウイルスによって引き起こされる症状について、
例えば、倦怠感や呼吸困難感、味覚・嗅覚障害といった症状は発症時から生じますが、
発症後数ヶ月経ってから初めて出現する症状もあることがわかってきました。
それが“髪の脱毛(Hair Loss)”です。
昨年10月、国立国際医療センターの宮里氏たちは、同センターで治療し解析対象とした患者のうち58例中14例(24.1%)で遅発性に脱毛症状が見られたと報告しています[1]。
また、今年に入ってからも、世界で初めて感染者が発生した地域である武漢の医師たちが、
解析対象とした患者のうち1655例中359例(22%)に回復後6ヶ月の時点で脱毛症状があると報告しています[2]。
これはこの調査において、倦怠感(63%)、睡眠障害(26%)に次いで3番目に頻度が高い症状です。
これらを踏まえると、発症の割合としては、新型コロナウィルス感染症に罹患し回復した人の、4〜5人に1人が脱毛症状を呈しているであろうことがわかります。
[1] Yusuke Miyazato: Prolonged and Late-Onset Symptoms of CoronavirusDisease 2019. Open Forum Infectious Diseases(October 14, 2020)
[2] Chaolin Huang:6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohortstudy. Lancet 2021; 397: 220-32(January 8, 2021)
では、どうして新型コロナウィルス感染症にかかることで脱毛症状が引き起こされてしまうのでしょうか。
その原因は現時点でまだはっきりとは解明されていませんが、以下に挙げるいくつかの可能性が考えられています。
【なぜ新型コロナウィルス感染症にかかると脱毛症状が引き起こされてしまうのか?】
① 休止期脱毛
髪の毛に限らず、毛というのは、
“成長期→退行期→休止期→脱毛”
という毛周期を繰り返しています。
精神的・身体的ストレスや出産などホルモンの急激な変化により、成長期の毛が休止期に移行してしまうことで生じます。
症状は一過性であり、約半年後には改善することがほとんどですが、稀に症状が固定してしまうこともあります。
② 男性型脱毛(AGA)
男性ホルモンが原因で起こる脱毛症です。
毛周期のうち、2〜6年ある成長期が約1年に短縮してしまうことで未熟な毛髪が増え、
また結果として休止期の毛髪の割合が増加するため薄毛として頭髪が目立つようになってしまいます。
男性の約3人に1人がAGAとも言われており、未治療の方に新型コロナウィルス感染症を契機とした休止期脱毛が重なった場合、
抜け毛の増加や毛量の減少をいつも以上に強く感じる可能性があります。
③ その他
新型コロナウィルスに感染し体内でサイトカインストームが起きることで
- 自己免疫性疾患のひとつとして脱毛が生じる
- 微小血管内血栓ができ頭皮血流が阻害され脱毛が生じる
というような可能性も否定できないと言われています。
【まとめ】
新型コロナウィルス感染症に関しては未だ明らかになっていないことも多く、日々新しい知見が報告されています。
今回は、後遺症の一つである脱毛症状についてまとめました。
AGAによる抜け毛・薄毛にお悩みの方はもちろん、新型コロナウィルス感染症後に脱毛を自覚された場合もまずは医師に相談されることをおすすめします。