日本人男性の約3人に1人が薄毛に悩んでいると言われています。
また近年では女性の社会進出がすすみ、男性と同じようにバリバリ働く女性も多く、日々のストレスや食生活の乱れによって薄毛に悩む20〜30代の女性の方も増えているようです。
髪の毛が徐々に薄くなっているような気がするけれど、思い当たる原因が特にない。
髪の毛が薄くなっていく症状にはいくつかあり、原因も様々です。
薄毛の種類がわかればその原因も見えてくるので、自分の薄毛について知ることが薄毛対策の第一歩です。
そもそも薄毛ってどんな状態のこと?
医学的な定義はありませんが『髪のボリュームが減少することによって頭皮がすけて見えるようになった状態』を指します。
抜け毛が増えて全体のボリュームが減ってしまう場合と、髪の毛自体が細くなってしまう(軟毛化と言います)ことで髪の毛の量は変わっていないのに減ったように見えてしまう場合、またはその両方が一度に起きている場合があります。
薄毛の主な種類と原因(男性編)
薄毛は遺伝や生活習慣、ストレスやホルモンの影響など様々な要素が原因となって引き起こされます。
ここでは原因を4つに分類して解説していきます。
① 頭皮環境の悪化
健康な髪の毛を生やすためには、土台となる頭皮が健やかな状態であることが必要です。
頭皮の状態が悪くなってしまう原因として、血行不良や炎症が挙げられます。
もともと頭皮は毛細血管がたくさんあり血流量が多い部位ですが、長時間のデスクワークや運動不足などで全身の血流が悪くなると頭皮の血流も滞ってしまいます。
髪は毛根の底にある毛乳頭という部分で毛細血管から栄養を吸収して作られていくため、頭皮の血流は髪の成長に直結すると考えて良いでしょう。
また、汚れが落としきれず皮脂詰まりを起こしていたり、逆に洗髪のしすぎで乾燥してしまうと皮膚炎を起こしてしまう可能性があります。
健康な頭皮は柔らかく、青白い色をしています。普段から頭皮の硬さや色味をチェックし、変化に気づけるようにしておくことが大切です。
② 栄養不足
髪の大部分はケラチンというタンパク質でできています。
ケラチンは何種類ものアミノ酸で作られており、その多くは必須アミノ酸と呼ばれる人間の体内で生成できないものです。そのため食事からしっかり摂取する必要があります。
そしてそのアミノ酸からケラチンを作る働きを助けているのが亜鉛であり、亜鉛を体内に吸収するにはビタミンが必要です。
頭皮の血流が十分でも、運ぶ栄養素が足りない状態では髪は育ちません。
髪は生命維持に必要な組織ではないため、どうしても栄養が行き渡りづらくなります。
食事制限による過度なダイエットはもちろん、偏った食生活をしている方も要注意です。
③ AGA
AGAとはAndrogenic Alopecia(男性型脱毛症)の略称です。遺伝による薄毛もAGAに含まれます。
思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症のことで、日本人男性の場合、20代後半〜30代にかけて発症し、40代以降にかけて進行していくことが多いと言われています。
AGAは毛根の近くにある皮脂腺から5αリダクターゼという物質が分泌され、これが男性ホルモンと結合することで引き起こされます。
男性型脱毛症と言われると何か病気のように感じてしまうかもしれませんが、男性における生理現象の一つと言えるでしょう。
飲み薬や塗り薬で進行を抑えられることがわかっていますので、なるべく早く発見し治療を開始することが大切です。
④ その他
- 円形脱毛症
ストレスが誘因となって引き起こされる自己免疫性疾患と言われています。中には遺伝性のものもあります。皮膚科で治療することができます。 - 抜毛症(トリコチロマニア)
自分で自分の髪を抜いてしまう一種の癖と言えます。ストレスが原因になっていることも多く、やめたくてもやめられない場合は精神科や心療内科の受診を勧めることがあります。 - 甲状腺の異常
甲状腺機能亢進症・低下症いずれの場合も脱毛の症状が現れることがあります。他の可能性を除外するため、まずは皮膚科の受診が必要です。 - 薬剤によるもの
代表的なものは抗がん剤の副作用です。原因となる薬の使用を中止するとまた発毛するようになります。
薄毛の主な種類と原因(女性編)
・FPHL(female pattern hair loss)
FPHLとは、female pattern hair lossの略で、日本語では「女性型脱毛症」と呼ばれます。
これまでは「女性男性型脱毛症(FAGA=female androgeneic alopecia)」と呼ばれていた、女性特有の脱毛症状を示す比較的新しい概念です。
加齢により女性ホルモンの分泌が低下したり、頭皮の血流が低下したりすることで引き起こされます
薄毛が気になり出す時期は更年期の前後が多いため、加齢による脱毛は閉経前後から顕著になると考えられています。
また、仕事や日常生活のストレス、過度なダイエットで薄毛が進行することもあります。
・円形脱毛症
円形脱毛症とは、コインの形のように円形に脱毛する突発性の脱毛症です。
疲労や感染症などの肉体的・精神的なストレスによって免疫機能に異常が発生する自己免疫疾患とされ、老若男女を問わず、誰でも発症する可能性があります。
放置しても自然治癒する場合もありますが、大きく広がったり再発をくりかえしたりする場合は適切な治療が必要です。
・産後脱毛症
産後の抜け毛には、「ホルモンバランス」と「毛髪サイクル」、「激変する生活」の3つが関係しています。この場合は、時間の経過とともに抜け毛も落ち着いてくることがほとんどです。
長く続く場合には産婦人科の先生に相談をしてみるといいかもしれません。
・牽引性脱毛症
頭皮や毛髪が外部刺激により、引っ張られることで生じる脱毛症です。
髪の毛が長時間引っ張られると、頭皮が緊張し血行が悪くなります。
頭部の血行が悪くなると、髪の成長に必要な栄養が十分に届かなくなり、髪の毛が細くなって薄毛の原因となるのです。
他にも、常に同じ分け目にしていると、その刺激が積み重なったり、紫外線を受けやすくなることで、抜け毛が発生することがあります。
薄毛の見分け方
・男女による違い
男性
- 額や頭頂部などを中心に髪が薄くなる
- 完全に毛が抜け落ち無毛になりやすい
女性
- 頭頂部を中心として全体的に髪が薄くなる
- 髪の密度が減る程度で、無毛にはなりにくい
上記のように、男性の脱毛症は前頭部から薄くなっていくのが一般的ですが、女性の場合は髪の毛全体が薄くなっていくのが特徴です。
このような症状は、男性によく見られる「男性型脱毛症」とは異なる女性特有の脱毛症「びまん性脱毛症」と言います。→びまん生脱毛症について詳しくはこちら
・部位による違い
①前頭部
一般的にいう、”おでこ” です。前頭部の薄毛が進行した場合は、「M字ハゲ」などと呼ばれます。
前頭部の脱毛の初期は、多くの場合、おでこの真ん中の部分は髪の毛を残しながら、両サイドの部分が後退してきます。前から見るとM字に見えます。
さらに進行すると、M字の切り込みが深くなり、最初は髪が残っていたおでこの真ん中の辺りの髪の密度も薄くなってきます。
②頭頂部
頭のてっぺんのことです。つむじが薄くなる場合もあります。
上から見ると分かります。おでこの髪の毛が残っていると、意外と薄毛の初期の段階は気づかれない場合もあります。
丸い形で薄くなってきますので「O字」とよばれます。
③側頭部
頭の両側面、両耳の上側のエリアのことです。
側頭部から薄毛が始まることはまれで、前頭部や頭頂部の薄毛が進行して、最後に側頭部が頭頂部側から薄くなってきます。
④後頭部
頭の後ろの部分です。AGAが進行しても最後まで髪の毛が残りやすく、基本的には、側頭部と同じ薄毛進行の経過を辿ります。
そのほかに考えられる薄毛の原因
①ストレス
・直接的な原因
何らかの原因でストレスが溜まると、自律神経に作用することで、血行不良を起こす可能性が指摘されています。
頭皮の血行不良が続くと、髪の毛の根元にある毛母細胞(髪の毛を作ってくれる細胞)に十分な酸素や栄養を供給できず、髪の毛が細く弱々しくなって薄毛につながります。
・間接的な原因
このような直接的な原因だけでなく、ストレスが間接的に薄毛につながるケースもあります。
例えば、食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足、頭皮の皮脂が増える、タバコ・お酒が増えるといったライフスタイルへの影響があげられます。
ライフスタイルの乱れがストレスにつながることもあり、まさに「鶏と卵」の関係となっています。ストレス社会に生きる現代人の宿命とも言えるかもしれません。
また、近年話題となっている「酸化ストレス」もライフスタイルが影響している可能性があります。
②食事
・睡眠の質が下がる
コーヒーにはカフェインが含まれています。カフェインには、覚醒(目を覚ます)作用や利尿(尿が増える)作用などがあります。
特に寝る前に多量のコーヒーを飲むことで、カフェインの作用により寝つきが悪くなり、寝ているときにトイレに行きたくなったりして、睡眠の質が下がってしまう可能性があります。
質の良い睡眠を取ることは、ストレスを減らし、生活習慣の改善にもつながります。
髪の毛を強くするホルモンは、睡眠中に多く分泌されることが知られており、薄毛と睡眠は密接に関係していると考えられます。
抜け毛でお困りの方は、ご自身の睡眠を見直してみてはいかがでしょうか。
・亜鉛の吸収が悪くなる
「亜鉛」とは、ヒトが生きていく上で欠かせないミネラルの一つです。体の中で酵素を活性化し、細胞の分裂や免疫機能をサポートします。
新しい細胞が作られる組織には必要不可欠で、「髪の毛」もその一つです。主な成分である「ケラチン」を作る上で、亜鉛は重要な働きをしており、育毛効果が期待できるほか、皮膚の健康にとっても大切な存在です。
亜鉛の推奨摂取量は1日あたり成人男性で約10mg、成人女性で約8mgと言われています。
亜鉛不足の症状で有名なものに「味覚障害」があります。髪の毛に関しては、抜け毛や薄毛、白髪となどの原因になる可能性が指摘されています。
この飽食の時代において、亜鉛不足の症状が目立って出ることは稀ですが、偏食・コンビニ食や過度なダイエットが原因になることがあります。
また、コーヒーに含まれる成分が、亜鉛の吸収を邪魔してしまう可能性も知られています。