薄毛・AGA(男性型脱毛症)に悩んでいる人や、そうでない人も、「薄毛は遺伝する」「家族がはげていたら自分もはげる」といった話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
実際、なぜ薄毛は遺伝すると言われているのか?
家族の中でも母方、父方から来る遺伝の差等、気になることをこの記事では解説いたします。
薄毛・AGAは遺伝する?薄毛と遺伝の関係性について
一般的に「薄毛は遺伝する」と思われている方が多いのではないでしょうか。
薄毛の原因の一つとしてAGA(男性型脱毛症)があります。
そしてこのAGAは、5αリダクターゼという酵素と男性ホルモン(テストステロン)が結合してジヒドロテストステロンという強力な男性ホルモンになり、それが男性ホルモンレセプター(受容体)に結合することで引き起こされます。
『AGAは遺伝する』と言われている理由として、
・5αリダクターゼの活性度
・男性ホルモンレセプターの感受性
の2つが遺伝情報として引き継がれやすいと考えられていることが挙げられます。
関係性をより理解していくためには、まず薄毛の原因であるAGAについて理解する必要があります。
AGA(男性型脱毛症)のメカニズム
AGAとは、男性ホルモンが関係することによって生じる脱毛症で、おでこの生え際や頭頂部から始まり、髪の毛が細くなって、少しずつ薄くなっていく特徴があります。
多くの場合、20代後半〜30代にかけて発症し、40代以降にかけて徐々に進行すると言われています。
髪には「ヘアサイクル」と呼ばれる、髪の毛の生え変わりの周期がありますが、成長期→退行期→休止期→脱毛というサイクルを繰り返しています。
健康な髪の毛では、ヘアサイクルにおいて髪の毛が伸びる「成長期」が2〜6年ですが、AGAの場合は、数ヶ月〜1年と短くなってしまいます。
なぜこのようなことが起こるかというと、次のようなメカニズムによります。
- 皮脂腺から5αリダクターゼという酵素が分泌される
- これがテストステロン(男性ホルモン)と結合する
- ジヒドロテストステロン(DHT)に変換される
- DHTと男性ホルモンレセプター(受容体)が結合するとTGF-β1という物質を産生
- これが毛乳頭や毛母細胞に作用すると髪の毛の成長が抑制される
- 髪が抜け、薄毛が進行する
このうち、冒頭で触れたように、遺伝が関係するのは「5αリダクターゼ」「男性ホルモンレセプター」の2つと言われています。
薄毛の遺伝は母方から来ている!?一歩踏み込んだ遺伝の関係性
日本皮膚科学会が作成した薄毛に関する診療ガイドラインである「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、「遺伝的背景としては X 染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や常染色体の 17q21 や20p11 に疾患関連遺伝子の存在が知られている」と書かれています。
(※ガイドライン:科学的根拠に基づいて作成された、その時点で最も推奨される診断・治療法を示す文書)
ここで重要なのが「X染色体」というワードになります。
X染色体とは2種類ある性染色体のうちの一つです。
学生時代に生物などの授業で勉強された方もいるかと思いますが、性染色体とはヒトがもつ全46本(23対)の染色体のうち44本(22対)の「常染色体」を除いた2本(1対)のことです。
性染色体は、性別によって次のようになっています。
それぞれ、その人の父親、母親からそれぞれ1本ずつ受け継いだX染色体またはY染色体の対になりますが、女性はX染色体しか持たないため、母親からはX染色体が受け継がれることになり、男性(父親)からX染色体またはY染色体を受け継がれることになります。
ここで、自身が男性である場合は、父親からはY染色体を受け継いでおり、整理すると「XY → X:母親から、Y:父親から」となります。
先ほどの説明にあった、"X染色体上"の男性ホルモンレセプターの遺伝に注目すると、母親(母方)からの遺伝による影響が大きいと言えます。
また、AGAは男性ホルモンが関わる薄毛の症状であることから「母方の祖父」が薄毛の場合、自分も薄毛になりやすい遺伝子をもっている(男性ホルモンレセプターの感受性が高い)と考えられます。
ただし薄毛は遺伝だけではない
これまでの解説で、薄毛(AGA)には遺伝が大きく関わっているということがお分かり頂けたかと思います。
しかし、あくまで「薄毛になりやすい遺伝子をもっている」ということであり、必ず薄毛になるというわけではありません。
また、反対に遺伝子がないから薄毛にならないわけではありません。
薄毛のメカニズムとしては、男性ホルモンが関係するAGAが原因であることが多いですが、日々の生活習慣による頭皮環境の悪化や血行不良などで毛の成長が不十分であったり、抜けてしまうこともあります。
薄毛の改善・治療方法について
治療薬フィナステリドの内服
フィナステリドは、5αリダクターゼを阻害し、男性型脱毛症の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する効果があり、AGAの治療薬として世界中で広く利用されています。
AGAの治療に内服薬が効く仕組みについては、関連記事でも解説しています。
(詳細は「【医師監修】AGAの治療に内服薬・外用薬が効く医学的な仕組みとは」をご覧ください)
なお、フィナステリドという名称は成分名であり、商品名としてはアメリカのメルク社が開発した「プロペシア」という名称も広く知られています。
同じ成分のジェネリック医薬品(後発品)が国内外の複数の製薬会社から製造販売されており、これらは主に「フィナステリド」という名称で販売されています。
薄毛を治療していく場合は、このように医薬品を用いることが診療ガイドラインにおいても推奨されています。(詳細は「日本皮膚科学会男性型脱毛症(AGA)診療ガイドラインを医師が分かりやすく解説」をご覧ください)
まとめ
今回は薄毛と遺伝の関係性について解説しました。
薄毛に悩んでいる方で、身内に薄毛の方がいらっしゃる場合も、そうでない場合も、根本的な治療を望まれる方は薄毛のメカニズムに作用する「医薬品」を用いた治療を検討する必要があります。
治療について気になる方はまずは「Hair's」で医師に相談されることをご検討ください。