M字はげとは?どこから?定義や基準について
M字はげとは
まず「M字はげ」とは、頭上から見たときに、アルファベットの「M」のように見えることからそのように呼ばれています。
左右の生え際が剃り込みのように後退している状況を言います。
薄毛のタイプは「ハミルトン・ノーウッド分類」というもので9つに分けられますが、もう少しざっくりとした分類として、頭上から見た形として「M字」「O字」「U字」の3つの分類で言われることも少なくありません。
(詳細は「【医師監修】あなたの薄毛はどのタイプ?AGAのタイプ別のご紹介と対処法を解説」をご参照ください)
その中で、前頭部の左右の生え際から薄毛が進行するものが「M字はげ」と呼ばれるものになります。
どこからがM字はげなのか?
M字はげを明確に定義した基準はありませんが、一つの目安として以下のような診断方法があります。
生え際の状態をチェックするもので、自分自身でのセルフチェックもできるので、気になる方は一度試してみてみてください。
また、年齢はあまり関係なく、高校生など10代や20代といった若い世代でも、生え際が後退して来ていることを気にしている方は少なくないようです。
あなたもM字はげに該当しているか下記をご参考にチェックしてみましょう。
M字はげのチェック方法
①左右の生え際が、額から指2本分以上後退しているか(簡易的)
この診断方法は、鏡やスマホ等があれば簡単に確認できるものになります。
確認方法は、次のステップのとおりです。
- 鏡やスマホで自分を正面から写す
- 眉毛に力を入れて、眉を上にできるだけ持ち上げる
- 額にできる一番上のシワと、一番深い生え際の間隔を指で測るこの時「指2本分」もしくはそれ以上の間隔がある
上記全てのステップに該当する方は、M字はげの可能性が高いです。
ただ、この方法は簡易的で指の太さなどの個人差もあるため、次のメジャーを使った測定も可能であれば行ってみてください。
②メジャーを使って、生え際と、耳上との差を測る
この診断方法は、メジャーが必要なのと、一人では少し測りにくいものになります。
確認方法は、次のステップのとおりです。
- 耳上から垂直に頭頂部までを繋いだ線を考える
- 左右の生え際から、この線までの距離をメジャーで測るこの時の長さが「2cm」以下
こちらに該当すると、薄毛と言われます。
いかがでしたでしょうか?
今はまだ大丈夫だったか方も、年々おでこが広くなっていると感じている方は、今後M字はげが進行する可能性も高い予備軍かもしれません。
気になる方は早めに対策していくことをおすすめいたします。
ここからは、M字はげの原因や対策について解説いたします。
M字はげの原因は?
M字はげの原因として考えられるのは、次の2つがあります。
でも、男性の方は前者の「男性型脱毛症(AGA)」の可能性が高いと考えられます。
それぞれの特徴・症状や原因について解説いたします。
男性型脱毛症(AGA)
AGAとは、「男性ホルモン」や「遺伝」によって生じる脱毛症で、おでこの生え際や頭頂部から始まり、髪の毛が細くなって、少しずつ薄くなっていく特徴があります。
多くの場合、20代後半〜30代にかけて発症し、40代以降に進行します。
年齢が上がるごとに発症率が高くなります。
髪には「ヘアサイクル」と呼ばれる、髪の毛の生え変わりの周期がありますが、ジヒドロテストステロン(DHT)とよばれる男性ホルモンの影響で、髪の毛が十分に成長しないため、髪が細く弱々しくなってしまいます。
健康な髪の毛では、ヘアサイクルにおいて髪の毛が伸びる「成長期」が2〜6年ですが、AGAの場合は、数ヶ月〜1年と短くなります。これは、男性ホルモンである、テストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素と結合することでDHTが生成され、発症します。
また、この「5αリダクターゼ」という酵素の中でも「Ⅱ型」というタイプのものが特に前頭部に多く存在するため、いわゆるM字はげと呼ばれる進行タイプが多くなります。
AGAについて詳しくは「男性の薄毛の原因の1つは男性ホルモン。でもそれだけじゃない?最新の知見を踏まえながら医師が徹底解説」をご参照ください。
また、AGAについては遺伝によっても起こるとされています。
これは、AGA発症の原因である酵素「5αリダクターゼ」の活性度や、男性ホルモン受容体の感受性が、遺伝する可能性が高いと言われているためです。
後記のように生活習慣などを見直すことも、対策としてはよく言われておりますが、このような薄毛になるメカニズムを理解することも大事だと考えています。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)とは、名前のとおり、髪が引っ張られることで髪が抜けたり、血行不良が原因で髪の成長が妨げられたりするものになります。
AGAのような男性ホルモンや、その他細菌やウイルス等が原因ではありません。
髪型などで、強く髪を引っ張ることで、頭皮への血行が低下して髪が栄養不足になり、髪が十分に成長する前に抜けてしまう症状です。
また単純に引っ張ることでの物理的な影響で髪の毛が抜けてしまうこともあります。
髪型や、ヘアバンド、髪を乾かす際に強く引っ張ったりブラッシングのやりすぎなど、思い当たる原因がある方は、まずこのような原因になっていることを見直すことから始めてみましょう。
M字はげの予防・対策法
では、M字はげの進行が気になっている方は、どのような予防を行っていくのが良いのでしょうか?
前頭部の薄毛の原因として可能性が高い男性型脱毛症(AGA)では、原因は男性ホルモンと酵素の働きによるものであるため、根本的にはやはり後記のように医薬品を用いていくことが望ましいですが、日々の生活の中では以下のような生活習慣等に気をつけると良いと考えられます。
生活習慣の改善
①健康的な適度な運動を行う
適度な運動を行うことで、頭皮への血流を促進する効果が期待できます。
例えばランニングのような運動は予防につながると考えられます。
ただし、紫外線は頭皮へのダメージにつながるため、夏の紫外線の強い日などは帽子の着用など頭皮を紫外線から守ることを心がけましょう。
②栄養不足にならないよう食生活に気をつける
特に髪の成長に必要とされる「たんぱく質」「亜鉛」「ビタミン」を不足しないよう摂取することを心がけましょう。
食事制限による過度なダイエットはもちろん、偏った食生活をしている方も注意が必要です。
ただし、かえって悪影響を及ぼす可能性もあるため、過剰な摂取は控えてください。
なぜこれらが必要になるのかという点について、まず髪の大部分はケラチンというタンパク質でできています。
ケラチンを構成する多くは必須アミノ酸と呼ばれるもので、食事から摂取する必要があります。
また、そのアミノ酸からケラチンを作る働きを助けているのが亜鉛であり、亜鉛を体内に吸収するにはビタミンが必要となるためです。
頭皮の血流を良くするだけではなく、髪の成長に必要な栄養素をしっかり体内に取り入れることが重要です。
③良質な睡眠を心がける
繰り返しになりますが、頭皮の血行が重要となる中で、睡眠不足は頭皮の血行を悪くします。
可能であれば24時前に寝て6時間以上の睡眠時間を確保するようにしましょう。
忙しくてなかなか睡眠時間が得られない方も、入眠3時間前は食事をとらないようにしたり、入眠前にスマホやパソコン画面を見ないようにしたりといった入眠環境を改善させることで、少しでも良好な睡眠が得られるように心がけましょう。
ヘアケアに気をつける
頭皮の環境を整えたり、血行を良くすることは、治療等を行う上でも土台作りとして行っておくことで効果を高められる可能性があります。
上に書いた生活習慣ですが、例えば不衛生にしていたり、生活が乱れたりを繰り返していると、皮脂などの汚れが溜まり毛穴が詰まったり、頭皮が乾燥してしまうことにも繋がります。
これが髪の成長に大事な、栄養素や酸素が頭皮や髪の毛に行きわたらない原因となり、薄毛をさらに悪化させる可能性も考えられます。
シャンプーについて
頭皮を清潔にしておくことは大事であり、その一つが洗髪になります。
ただし、薄毛を気にする方は普段から清潔にしなければと入念にシャンプーを行っている方も少なくないため「洗いすぎ」になっていないかを注意する必要があります。
洗いすぎることがかえって頭皮環境を悪くしている可能性も考えられます。
また、使うシャンプーの種類についても、汚れを落とす「界面活性剤」などは洗浄力が強すぎるということもあるため、今まで気にしていなかったという方は一度確認してみてもいいでしょう。
(詳しくは「【医師が教える】薄毛の原因はシャンプーにあった!?」をご参照ください。)
頭皮マッサージ
こちらも血行の改善として補助的な効果が見込めると考えられます。
頭皮を傷つけてしまったり、髪の毛が抜けてしまうような過度に強いものでなければ、こういったマッサージはダメという明確なものはありません。
継続した習慣にするためにも、自分自身が気持ちが良いと感じるマッサージが良いと思いますが、一例を記載いたしますので、参考にしてみてください。
- 頭全体を手のひらを使って、押すように揉みほぐす
- 頭全体に対して、指の腹を使ってポイントポイントで頭皮を押していく
- 頭皮を指先で弾くように刺激していく
M字はげの治療法について
ここでは、男性型脱毛症(AGA)の場合の治療法について紹介いたします。
実は治療法については「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」という、研究論文などを有識者らが読み込んだ上で議論し、作成された文書が存在します。
これは、科学的根拠に基づいて作成された、その時点で最も推奨される診断・治療法を示す文書のことです。
ガイドラインに記載されていることは信頼度が高く、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者も、このガイドラインを一つの大きな指針として日々の診療を行っています。
様々な成分の効果や、レーザー治療・植毛等を含む、複数の治療方法に対する検討については、別の記事で詳しく解説しておりますが、このガイドラインの中で「強く勧める」との評価がされている治療方法は、次の3つのみになります。(2017年度版において)
- ミノキシジルの外用(外用薬)
- フィナステリドの内服(内服薬)
- デュタステリドの内服(内服薬)
では、これら薬による治療方法について、詳しく見ていきましょう。
ミノキシジルの外用(外用薬)
ミノキシジルはもともと高血圧の薬で、強い血管拡張作用を持っており、頭皮の毛細血管の血流を改善することで、発毛を促進する効果があります。
こちらは国内外にておいて数々の研究でその発毛効果が実証されています。
使用方法として、1日2回、1回1mlずつを髪の毛の薄い部分に塗布し、マッサージのように揉みこみ使用します。
基本的には朝と晩の2回で、頭皮の乾いた状態で使用することが良いです。
また、ミノキシジルを含む外用薬は、処方箋が無くてもドラッグストアで買える商品もあれば、医師が処方するものもあります。
商品のよって濃度に違いがあり、一般的にドラッグストアで買える商品については濃度が低いことが多いです。
なお女性の薄毛については、男性ホルモンが原因となる男性型脱毛症とは異なるメカニズムと考えられていますが、ミノキシジルの外用については男性型脱毛症に比べて濃度は薄いものの「強く勧める」との評価になっています。
フィナステリドの内服(内服薬)
フィナステリドは男性型脱毛症の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を阻害する効果があり、AGAの治療薬として世界中で広く利用されています。
フィナステリドという名前は成分名であり、薬の名前としてはアメリカのメルク社が開発した「プロペシア」という名称も広く知られています。
薬の特許が切れた2015年頃から、同じ成分のジェネリック医薬品(後発品)が国内外の複数の製薬会社から製造販売されており、これらは主に「フィナステリド」という名称で販売されています。
使用方法としては、1日1回、経口投与(内服)するというものになります。
フィナステリドや後記のデュタステリドについては、ミノキシジルの外用と異なり、女性に対しては「行うべきでない」との評価となっているため注意が必要です。
デュタステリドの内服(内服薬)
デュタステリドもフィナステリドと同様、男性型脱毛症の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を阻害する効果があります。
フィナステリドとの違いについては、テストステロンと結びつき薄毛の原因を生み出している酵素「5αリダクターゼ」の2つのタイプの内「Ⅰ型」「Ⅱ型」の両方に効果がある点になります。(フィナステリドはⅡ型のみ)
使用方法としては、フィナステリドと同様に1日1回の経口投与となります。
上記、3つの治療方法については「【医師監修】AGAの治療に内服薬・外用薬が効く医学的な仕組みとは?」をご覧ください。
早めに対策するメリット
自分で気付きやすいため進行が気になるM字はげですが、今後の進行の可能性として、さらに前頭部の髪が後退することや、頭頂部も薄毛になる「U字」と呼ばれるような形に薄毛が進行していくことが考えられます。
前頭部のみの薄毛は、まだ進行状態としては手前になるため、早いうちに対策されることをオススメいたします。
また、メカニズムを解説したように、男性ホルモンと酵素が原因となる男性型脱毛症であるケースが多いため、日々の生活習慣やシャンプーを見直すなども大切ではありますが、根本的には進行を遅らせ発毛を促進する「医薬品」を用いた治療を検討する必要があります。
中でもガイドラインでは科学的根拠があり評価の高い「フィナステリド」や「デュタステリド」の内服と、「ミノキシジル」の外用が推奨されています。
M字はげが気になっている、あなたはまず「Hair's」で医師に相談されることをご検討ください。